洗練されたミニマルなデザインで世界を魅了する佐藤オオキさん。
デザインオフィス「nendo」の代表として、建築やプロダクト、アートに至るまで幅広く活動しながら、日本の美意識を現代的に再構築しています。
数々の国際的な賞を受賞し、美術館への作品収蔵、関西万博日本館の総合プロデューサーも務めるなど、その活躍はまさに「世界に誇る日本人」。
記事では、そんな佐藤オオキさんの人物像、作品、哲学、そして驚きの学生時代エピソードまでを深掘りします!
学生時代からビジネスマインド全開!型破りな原点
佐藤オオキさんは1977年、カナダ・トロントで生まれました。
10歳で日本に帰国し、やがて早稲田大学理工学部建築学科に進学。
首席で卒業するほどの優秀さを誇る一方で、在学中のエピソードは型破りそのものです。
例えば大学1年のとき、製図の授業のために購入した高価な製図ペンを結局使わず、雑誌の懸賞に応募するための似顔絵に使っていたそうです。
日経ビジネス : nendo佐藤オオキ氏が語る「デザインで経営を変える」
また、通訳のアルバイトをしていた商社が倒産したことをきっかけに、19歳にしてファックス1台で貿易会社を立ち上げるという行動力も。
さらに大学院時代には、人に頼まれて人材派遣会社まで運営していたというから驚きです。
学業の枠にとどまらず、「頼まれたらまずやってみる」というビジネスマインドと柔軟な思考が、すでにこの時点で開花していました。
これらの経験が、後に世界を舞台に活躍する原点となったのは間違いありません。
世界が魅了された作品たち──Cabbage Chairから関西万博まで
佐藤オオキさんの作品は、見た瞬間に人の心をとらえるインパクトと繊細な哲学が融合しています。
代表作のひとつ「Cabbage Chair」は、ファッションデザイナー三宅一生氏からの依頼で生まれたもの。
衣類製造の副産物であるプリーツ生地の端材を用い、折り重なる素材を自ら“むく”ことで椅子として成立するという、持続可能性と参加型デザインの美しい融合が評価されました。
また「Jellyfish Vase」では、水中にクラゲのように漂う花器を極薄の透明シリコンで再現。
まるで“色だけが漂っている”ような幻想的な表現で話題を呼びました。
さらに2025年の大阪・関西万博では、日本館の総合プロデューサーおよび総合デザイナーを務めています。
「いのちと、いのちの、あいだに」というテーマのもと、建築と展示が一体となって“循環”を体験できる場をつくるという壮大な挑戦に、彼の美意識と未来へのまなざしが凝縮されています。
「面倒くさい方を選ぶ」──独自の哲学と美意識
記憶が鍵、感情が扉
— beep_R_A.K. (@beep_roadrunner) June 5, 2025
nendo代表/チーフデザイナー・佐藤オオキ氏に、自身のデザイン哲学について語っていただきました。感情に共鳴し、揺さぶる作品制作を目指す中で、記憶と感情が素材の選択とデザインプロセスにどのように影響するかを佐藤氏が語ります。
HAWORTHhttps://t.co/mK8b1QNI89 pic.twitter.com/5cfdj9ifHP
佐藤オオキさんのデザイン哲学は、極端な装飾や派手さとは一線を画します。
「質素なもののなかに豊かさを見出す」「シンプルなものに優美さを宿す」といった考え方を軸に、プロダクトから建築、アートまでを手がけています。
その背景には、彼が深く共鳴する“日本的美意識”の存在があります。
たとえば「隠す」ことの美学。
COURRiER : ドラえもんの“弟子”ミニマリスト・デザイナー佐藤オオキの哲学
日本の建築や茶道、和歌などに通じる「余白」や「間」といった感覚を、現代のデザインに落とし込んでいます。
佐藤オオキさん自身、こうした“あいまいさ”や“刹那性”に美を見出しており、散りゆく桜や線香花火に象徴される日本文化の繊細さを大切にしているのです。
また彼は、あえて「面倒くさいほうを選ぶ」と語っています。
楽な道を避け、試行錯誤のプロセスを楽しむ姿勢が、彼の創造性を底上げし、日々400件以上のプロジェクトを進行しながらも新鮮なアイデアを生み続けている理由なのです。
AXIS web : 佐藤オオキさん「基本的に面倒臭いほうを選ぶ」
月刊日本館 : 循環から見つめる、日本的な美意識について
国際的評価とミラノでの成功──世界に響いた“日本の心”
佐藤オオキさんの才能は、日本国内だけにとどまらず、国際的なデザイン業界からも高く評価されています。
2006年には「Newsweek」誌によって「世界が尊敬する日本人100人」に選出され、2012年には「ELLE DECO International Design Awards」にて“デザイナー・オブ・ザ・イヤー”を受賞。
その後も「Maison & Objet」(仏)、「German Design Award」(独)、「Wallpaper* Best Domestic Design」(英)など、世界各国の名だたる賞を多数受賞しています。
作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)やロンドンのV&A博物館など、一流の美術館にも収蔵されるほど。
特に、2003年から連続出展しているミラノデザインウィークでは、2017年に常時200人以上の行列ができる大盛況ぶりを記録。
紙製タイトルが雨で湿るというアクシデントすらも、彼の人間味やデザインに込めた想いを伝えるドラマとなりました。
佐藤オオキさんの作品は単なるデザインを超えて、世界に“日本の感性”を伝えるメッセージとなっているのです。
DesignWanted : nendoの独創的な作品 – 最高のデザイン作品10選
まとめ:世界に誇る“日本の感性”を形にする人
佐藤オオキさんは、単なるデザイナーではなく、日本の伝統や美意識を現代に翻訳し、世界に発信し続ける“文化の伝道者”とも言える存在です。
商業的な成功にとどまらず、日本人としての繊細な感性を形にし、国際的な評価を勝ち取ってきたその姿には、多くの人が心を動かされます。
これからも、佐藤オオキさんが生み出す“ちいさな驚き”に世界が注目し続けることは間違いありません。
