「再建のプロ」「マーケティングの天才」——そう呼ばれる男、森 岡 毅さん。
かつて倒産寸前だったUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を世界第4位のテーマパークに押し上げ、丸亀製麺や西武園ゆうえんちも見事にV字回復させた実績を持ちます。
彼が信じたのは“消費者目線”と“数学的根拠”。
一見、相反するような2つの軸を組み合わせて、数々の企業を蘇らせてきました。
今回はそんな森岡毅さんの戦略と魅力を、彼の歩みと共に追いかけてみましょう。
挫折から始まったキャリア。森岡毅、覚醒の瞬間
森岡毅さんのマーケティング人生は、華々しいものではなく“挫折”からスタートしました。
1996年に神戸大学経営学部を卒業し、P&Gに入社。
当初からロジカル思考に強く、数字にはめっぽう強かったものの、「かわいい」「かっこいい」といった感覚的センスを求められるマーケティングの現場に戸惑いを覚えました。
髪型やパッケージデザインの議論にまったくついていけず、自分はこの会社に合わないのではないかと悩む日々が続いたそうです。
日経BOOK PLUS : 森岡毅、絶望の淵に追い込まれた人生を変えた「強みを生かす」思考
しかし、第一子の誕生という人生の転機と向き合う中で、「他人と同じセンスを追うのをやめよう」という決意を固めます。
自分が得意とする“数字”と“論理”を最大限に活かす道を選び、マーケティングに「数学的な視点」を取り入れるという独自のアプローチが誕生。
これが、後にUSJや多くの企業を復活させる“森岡メソッド”の基礎となっていきました。
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USJを世界4位に導いた“数学的マーケティング”
2010年、森岡毅さんは当時業績不振だったユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)へ入社。
2012年にはCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に就任し、本格的な改革に乗り出します。
キーワードは「消費者目線の徹底」。
来場者の行動や感情を観察し、自らも混雑時にパークへ足を運ぶなどして“並ばされる人間の気持ち”を体感したといいます。
そして生まれたのが「ハロウィン・ホラーナイト」の大成功。
恐怖と非日常を融合させ、来場者の「感情」を刺激しました。
GLOBIS学び放題×知見録 : 【森岡毅氏インタビュー】USJ復活のカギは消費者目線の徹底(1)
また、450億円規模の大型投資を決断した際には、「最低でも来場者200万人増」という数学的な根拠を示し、社内の反対意見を説得。
実際に、USJは世界第4位のテーマパークへと急成長しました。
毎朝146項目の数値をチェックし、若手社員にも数字意識を根付かせる姿勢は、まさに“ロジカルな情熱家”そのもの。
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丸亀製麺もV字回復!原点に立ち返るマーケ戦略
USJでの成功を経て、森岡毅さんは2017年に自身のマーケティング集団「刀(カタナ)」を設立。
翌年から始まった丸亀製麺のリブランディングでは、ブランドの“原点”を徹底的に見直しました。
彼が注目したのは、店舗で「粉から作っている」という強みが消費者に伝わっていないこと。
ブランディングの不在が根本的な問題と捉え、「すべての店で、粉からつくる。」というキャッチコピーを全面に押し出しました。
さらに、店内の製麺機を見せる演出や、「出来たての感動」を実感できるオペレーション改革など、現場の体験価値向上に着手。
このアプローチにより、2019年から客数が増加に転じ、見事なV字回復を実現しました。
日経クロストレンド : 森岡毅氏単独インタビュー 丸亀製麺・復活の秘策
単なる広告戦略ではなく、「なぜ選ばれるのか?」という本質的な価値を掘り起こす力こそ、森岡毅さんの真骨頂。
消費者目線×ロジカル思考の融合が、ここでも光を放ったのです。
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最新プロジェクト“ジャングリア”にかける思い
ディズニーを超えられるか?森岡毅の“ジャングリア戦略”
— テレ東BIZ (@txbiz_ondemand) July 27, 2025
ジャングリア沖縄がついに開業!沖縄の複数の企業も出資する大規模プロジェクトですが、その中心人物がマーケティング集団“刀”の森岡毅CEOです。… pic.twitter.com/RM7MrybIIf
森岡毅さんの挑戦は今も進行中。
彼が現在力を注いでいるのが、沖縄北部に完成した大型テーマパーク「ジャングリア」です。
総投資額はおよそ700億円という一大プロジェクトで、森岡毅さんが掲げるのは、「興奮」「贅沢感」「開放感」という人間の本能に訴える3つのキーワード。
その体現として、世界最大のインフィニティ露天風呂(ギネス認定)や、ジュラ紀の地層から汲み上げた温泉など、唯一無二の施設が計画されています。
さらに驚くのは、成功確率を“73%”と具体的に算出している点。
これは、過去の統計データと独自のロジックに基づく計算だといいます。
まさに「数字で夢を描くマーケター」。
感情と数値のバランスを両立させる森岡毅さんの姿勢が、この新プロジェクトでも健在です。
日本に新たな観光の目玉を生み出す――そんな未来を現実に変える一歩が、着々と進んでいます。
東洋経済ONLINE : 〈インタビュー〉マーケティング会社「刀」の森岡毅CEOに「ジャングリア沖縄の開業」「イマーシブ・フォートでの試行錯誤」を聞いた
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まとめ:日本を元気にする“マーケティングの力”
森岡毅さんは、データとロジックを駆使しながらも、常に「人の感情」に寄り添うマーケティングを実践してきました。
USJの復活、丸亀製麺の再生、西武園のリブランディング——
いずれも消費者の目線と体験を重視しながら、「数学で裏付ける」という独自のスタイルが光ります。
そして今、日本の未来を見据え、ジャングリアのような大規模プロジェクトにも挑む森岡毅さん。
彼の存在は、“マーケティング=感動をつくる仕事”だということを、私たちに教えてくれているのかもしれません。