映画やドラマを観ていて、「大きなセリフがあるわけでもないのに、なぜか心に残る俳優」がいる。
古川琴音さんも、まさにそんな存在ではないでしょうか。
映画『ほどなく、お別れです』で彼女が演じたのは、出産を目前に命を落とす女性・柳沢玲子。
決して派手な役ではありませんが、観終わったあとに静かに、しかし確実に感情が残る演技が話題になっています。
なぜ古川琴音さんの演技は、声を荒げなくても、涙を強調しなくても、こんなにも観る人の心に届くのか。
本作での役どころや本人の言葉、これまでの歩みをたどりながら、“静かに刺さる演技”の理由と、その人物像にそっと近づいてみたいと思います。
🎥『ほどなく、お別れです』で見せた“静けさのある存在感”とは
『ほどなく、お別れです』で古川琴音さんが演じる柳沢玲子は、物語の序盤で亡くなってしまう人物です。
しかも設定は、出産を目前にした妊婦という、非常に重く繊細なもの。
この役柄を聞くだけで、「悲劇性を前面に出す演技」を想像する人も多いかもしれませんが、古川琴音さんの表現はまったく違います。
彼女が大切にしているのは、“不幸さを強調しないこと”。
むーたん公式コメントでも、「かわいそうな人」「残念な人生」としてではなく、**「本人が幸せだったと伝わるように演じたい」**という思いを語っています。
だからこそ、柳沢玲子は“悲劇の象徴”ではなく、確かに日常を生きていた一人の女性として、観る側の記憶に残ります。
表情も声も、必要以上に感情を乗せない。
それなのに、画面の端に映るだけで、空気が変わる。
その理由は、「演じている」という主張が極端に少ないからかもしれません。
感情を押しつけるのではなく、観る側が感じ取る余白を残す。



その余白があるからこそ、私たちは自分自身の経験や感情を重ねてしまうのです。
『ほどなく、お別れです』は“別れ”を扱う物語ですが、古川琴音さんの演技は、喪失よりも**「そこに確かにあった温度」**を残します。
静かで、淡々としているのに、後からじわじわ効いてくる。
その感覚こそが、彼女の存在感の正体なのかもしれません。
🌈感情を決めすぎない――古川琴音の演技スタンス
演劇メディアaudienceにて、『ピーターとアリス』にご出演の古川琴音さん撮影しました。ぜひご覧ください!↓https://t.co/PCpwnbDH7v pic.twitter.com/hn4suoPzgg
— 山本春花 (@haruka146) December 6, 2025
古川琴音さんの演技を語るうえで欠かせないのが、**「事前に作り込みすぎない」**というスタンスです。
インタビューでは、あらかじめ感情の正解を決めるのではなく、相手の声や表情、その場の空気に影響されて自然に気持ちが動くことを大切にしていると語っています。
この姿勢は、『ほどなく、お別れです』でもはっきりと表れています。
葬儀という非常に感情が揺れやすい場面であっても、古川琴音さんの演技は決して過剰になりません。
それは感情が薄いのではなく、感情を「見せる」より「にじませる」ことを選んでいるからです。
また、彼女は共演者についても「役に愛情を持つ人」「声が印象的」といった言葉で語っています。
これは裏を返せば、相手をよく見て、よく聴いて演技をしているということ。



自分がどう演じるかよりも、「相手がどう存在しているか」を受け取る。



その受信力が、自然なリアクションを生み、結果として“作っていない演技”に見えるのです。
さらに印象的なのは、舞台挨拶での言葉。
「身の周りの人がいつか亡くなる日が来ること」「亡くなった先にも温かな未来が残されていること」を改めて感じたと語っています。
この発言からも分かるように、古川琴音さんは役を通して答えを提示する人ではなく、問いを共有する人なのだと思えます。
だからこそ、彼女の演技は観る側に委ねられ、静かに心へ入り込んでくるのかもしれません。
🌟原点は「表現が好き」だった少女時代にある
古川琴音さんの“静かに刺さる演技”は、決して突然生まれたものではありません。
幼少期からバレエやピアノに親しみ、「人前で発表することが好き」だったというエピソードは、彼女の表現の原点をよく表しています。
中学時代には演劇部を自ら作ってもらい、大学では舞台や表現を学ぶ道へ。
就職活動を前に、「一度挑戦してみよう」とオーディションを受けたことが俳優人生の転機になりました。
ここで重要なのは、最初から“目立ちたい俳優”を目指していたわけではないという点です。
彼女が積み重ねてきたのは、技術よりも**「感じ取る力」**。
音楽や身体表現、舞台経験を通して、感情を大きく表現しなくても伝わることを、自然と体で覚えてきたのかもしれません。
その積み重ねが、『ほどなく、お別れです』のような繊細な作品で生きています。
生と死、残される人の感情、言葉にできない余韻。
そうしたものを無理に説明せず、そっと差し出すことができるのは、表現に対して誠実であり続けてきた証のようにも感じられます。
古川琴音さんは、前に出て感情を引っ張る俳優ではありません。
それでも作品が終わったあと、「あの人が忘れられない」と思わせる。
その静かな強さが、今、多くの作品で求められている理由なのかもしれません。
📌まとめ
古川琴音さんの演技が“静かに刺さる”理由は、声を張らないことでも、感情を抑えているからでもなく、観る側を信じて演じているからなのだと思います。
『ほどなく、お別れです』で見せた柳沢玲子は、悲しみを強調しないからこそ、人生の温度や余韻が深く残ります。
感情を決めすぎず、相手と向き合い、その瞬間に生まれるものを大切にする。
その積み重ねが、彼女ならではの存在感を形づくっているのでしょう。
これからもきっと、気づいたときには心に残っている。
そんな演技を、そっと届けてくれるのではないでしょうか。









