M-1グランプリ2025で、ついに“たくろう”が決勝へたどり着きました。
7年ぶりの準決勝進出から、その勢いのまま一気にファイナルの舞台へ。
普段は険しい表情の多い赤木裕さんが、決勝進出発表で満面の笑みを浮かべたというエピソードは、コンビの長い挑戦の重さを物語っています。
“挙動不審漫才”“ハイスピード小声漫才”という唯一無二のスタイルが、なぜここで爆発したのか。
背景・ドラマ・実力、すべてをまっすぐに掘り下げていきます。
「挙動不審」と「小声」が武器へ変わった瞬間|自然体から生まれた唯一無二の漫才
コンビ名の由来は、きむらバンドさんが大好きな木村拓哉さんの「たく」と、赤木裕さんが大好きなイチローさんの「ろう」を組み合わせて「たくろう」と命名。
たくろうの漫才を語るうえで、まず外せないのが“自然体”という言葉です。
デビュー当初、赤木裕さんは天竺鼠・川原克己さんへの憧れから、どっしり構えて天才肌の風を漂わせるようなキャラクターを意識していました。
一方で、きむらバンドさんはフットボールアワー後藤のようなキレ味のあるツッコミを求めていた。
つまり、どちらも背伸びしていたわけです。
むーたん当然、その空気は観客にも伝わり、結成当初の2カ月はスベりが続いたと当人たちは振り返っています。
週プレNEWS : 一度聴いたらクセになる”ハイスピード小声漫才”たくろう「キムタク+イチローでたくろうです」【オール巨人も激推しする「未来のM-1王者候補」連続インタビュー②】
この“無理をしていた時期”が、後の飛躍にしっかりつながるところが面白い。
きむらバンドさんが「無理してスベるくらいなら自然にやろう」と腹をくくったことで、コンビの方向性が一気に開けたのです。
強がりを捨て、ふたりの素のペースでやりはじめた結果、赤木裕さんが小声でボソボソとしゃべり続け、きむらバンドさんが優しく包み込むようにツッコむという、誰にも真似できないスタイルが誕生しました。
この“挙動不審”な小声のボケは、普通なら弱点になりかねません。
ところが赤木裕さんの場合、その小声が妙に耳に残り、何を言っているかわからないのに笑えてしまう独特の間を生み出す。



きむらバンドさんが「次行くで」と空気を切り替えようとしても、赤木裕さんが小声で話し続ける——この構図は一度見たら忘れられないクセになります。
無理に寄せていた時代を捨て、素のままでやるようになった。
その決断が、たくろうを“異色の存在”ではなく“武器を持つ漫才師”へ変えたのです。
自分たちの本来の形をつかんだことこそ、今の快進撃の土台になっています。
7年越しの逆転ドラマ|マンゲキ育ちの芸人がM-1決勝へたどり着くまで
険しい表情が多いたくろう赤木、M-1決勝進出で笑うhttps://t.co/ztzZDZRlec#M1 #M1グランプリ pic.twitter.com/yS1ZEcrLHy
— お笑いナタリー (@owarai_natalie) December 4, 2025
たくろうがM-1決勝へ進むまでには、焦りも悔しさも山ほどありました。
2018年に準決勝まで進み、敗者復活戦に出場。
その時、新幹線で大阪へ帰る2時間半の間に単独ライブのチケットが100枚売れたという“手応え”を、きむらバンドさんは今でも鮮明に覚えています。
しかしその後、結果だけを見ると急激に跳ねたわけではありません。



漫才は磨き続けても、思ったように賞レースの波に乗れない時期が続きました。



それでも折れず、よしもと漫才劇場(マンゲキ)という厳しい場所で毎日鍛え続けたことが、彼らの力を底から支えました。
マンゲキは若手の実力派がひしめく“競技場”のような環境で、売れる前から実戦を積めるからこそ、常にネタの質が問われる。
そこで何年も揉まれ続けたことで、ネタの密度、やるべきテンポ、空気の読み方が徹底的に仕上がっていったのです。
そして2025年、7年ぶりに準決勝へ帰ってきた彼らは、過去のどの時期よりも“迷いのない状態”でした。
決勝進出発表の瞬間、普段は険しい顔が多い赤木裕さんがニコニコ笑っていたというエピソードは象徴的です。
お笑いナタリー : 険しい表情が多いたくろう赤木、M-1決勝進出で笑う



長く苦しい時間を乗り越えた芸人だけが持つ、あの静かな手応え。



赤木裕さんが「ネタをやっている時も手応えがあった」と言い切ったのは、決して強がりではありません。
毎日の舞台で鍛えた経験、悔しさで折れなかった心、そしてようやく巡ってきたチャンス。
それらが積み上がって、今年ついに一枚の扉が開いた。
たくろうの決勝進出は、ただの“初進出”ではなく、7年越しの逆転劇なのです。
個性の塊コンビはなぜ支持される?|“挙動不審”を愛されキャラに変えた人間力
たくろうが多くのファンに愛される理由は、ネタの中だけでは語り切れません。
ふたりの人間味が、そのまま魅力に変わっているからです。
赤木裕さんは、高校時代ずっと野球をしていたにもかかわらず、3年で「下手すぎる」とマネージャーに回された経験を持ちます。
悔しい思いを抱えながらドリンクを作っていたその時期に、「絶対に一発逆転してやる」という反骨心が芽生えたと言います。



ここに、赤木裕さんの芯の強さと、どこか不器用な優しさがにじみます。
chファイルズ : 異色芸人コンビ・たくろう「高校時代に芽生えた反骨心で一発逆転を狙う」
小声でブツブツ言い続けるあの独特のキャラの裏に、実はこういう負けん気が詰まっているわけです。
一方、きむらバンドさんは愛媛時代に“王様状態”だったと本人が言うほど、学生タレントとして活躍していました。
ミスコン司会を任され、営業でギャラももらい、周囲から引っぱりだこ。
そんな彼が、大阪に出てゼロから漫才に挑む選択をしたのは、明石家さんまさんや後藤輝基さんの背中を見たから。
華があるのに奢らず、相方を大切に扱う姿勢が、漫才でもそのまま生きています。



あの優しいツッコミは、性格そのものです。



さらにふたりの出会いからして、すでに物語があります。
NSC時代、先輩たちが口を揃えて「赤木が面白い」と言うのを聞き、きむらバンドさんは卒業後の赤木裕さんにアプローチ。
汗だくのおかっぱが走ってきた瞬間、「絶対こいつや!」と確信したという話は、あまりにもドラマチックです。
個性の強さを押しつけず、等身大の自分を武器にしたからこそ、観客の心に届く。
たくろうが支持される理由は、ネタだけでなく、“人として誠実で面白い”というシンプルな魅力が根っこにあるのです。
◆ まとめ
たくろうがM-1決勝まで駆け上がった背景には、
「自然体で勝負できる漫才」
「マンゲキで磨いた実力」
「人間味のある個性」
この3本柱があります。
挙動不審というクセの強い武器を、ふたりは逃げずに磨き続けました。
だからこそ、2025年の今、このスタイルがついに時代と噛み合ったのでしょう。
M-1決勝の舞台で、彼らがどんな“事件”を起こすのか。
今年もっとも“台風の目”になるコンビとして、たくろうの挑戦から目を離さずにいきましょう。
M-1グランプリ2025 決勝進出コンビ!

























